osk'HOUSE

一次創作ブログ

【MOBSTERS/1部1話】この国に新天地を求めて


『MOBSTERS 1部カステランマレーゼ戦争編』
1,この国に新天地を求めて


1部の主な登場人物






故郷の記憶はあまり残っていない。
特別な思い出も思い入れも正直持ち合わせちゃいない。

シチリアの田舎町、貧しい家。
父は癖毛でみすぼらしい風貌の弱気な男だったが、
母は赤毛と青い目が綺麗なしっかり者の女だった。

学校には行けず文字の読み書きもできなかった。
食うや食わずの生活でとにかく毎日腹を空かせていたのを覚えてる。
でも両親に兄弟、家族がみんなで力を合わせ何とかその日を精一杯生きていた。


1906年11月、俺が9歳になった時
両親は家族でイタリアを離れることを決めた。

あの頃は「移住する」ことや「移民になる」ということが
どういうことなのかまるで理解しちゃいなかった。
ただ初めて見る大きな船や広い海に心を躍らせてはしゃいでた。

船には俺たちと同じように故郷を離れるイタリア人の家族が大勢乗っていた。
もちろん他国の連中もたくさん。
あいつらの中にはもしかしたら、後々再会した仲間なんかもいたのかもしれない。

船で過ごした何日もの間毎夜のように父に訊かされていたのは
とある夢の島にある自由の街の話だった。
そこでは生まれや身分はなく誰もが平等である。
学校で勉強をする機会も様々な仕事に就く機会も全て均等に与えられ、
豊かで自由な生活を手に入れることができるという。

生まれた時から極貧生活だった俺は
子どもながらに夢というものを抱けなくなっていた。
夢なんてものはそれこそ夢の中にしかないものだと思ってた。
当然そんな父の話も半信半疑だったが、
夢を語る父の顔はいつも笑って幸せそうだった。


10日目の早朝、ざわつき出した船内の声に目が覚め甲板に飛び出した。
その日の記憶だけはとても鮮明に残ってる。
父の肩に乗って朝陽に輝くリバティの像を見た時の感動は今でも忘れない。
子どもの俺には陽の光のベールを纏った聖母のように見えた。
天国にでも連れてこられたのかと勘違いしちまったもんだ。

「トート、あれがアメリカだよ」
夢の島の名は共和国アメリカ、自由の街の名は大都会ニューヨーク。
ここで俺たちの新しい生活が始まる、輝かしい人生が。
ピアチェーレ、リバティ!」
アメリカで初めて云った言葉だ。
生まれて初めて期待に胸を震わせ、未来に希望を抱いた瞬間だった。

「さぁ、みんな船を降りるぞ。港でサルヴァトーレが待ってるはずだ」
家族で夢見た“アメリカンドリーム”……
だけどそれは“悪夢”の始まりだった――。






創作開始から三年目にしてやっと始まる物語ってどうよ\(^o^)/
というわけで『MOBSTERS』の第1部本編始まります!
どうぞよろしくお願いしますm(__)m