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一次創作ブログ

【MOBSTERS】もう一つのユメ【0.9部】



1928年12月末、ルチアーノ事務所。



チャーリー
「うへぇ!すんげぇ数だな!」

ベニー
「どいつだ?事務所の物置でゴミ溜めの王になろうしたヤローは」

マイエル
「野球ボールの山に小汚いのキャッチャーミット、
やたら香水臭い高級スーツにバカでかい筋トレグッズ、
十中八九お前とチャーリーだろ」

フランク
「…」

マイエル
「ロスティンの葬儀と事務所の移動でこの二カ月慌ただしかったからな。
事務所を大掃除する機会は今日しかない。要らない物は思い切って捨てるぞ」

チャーリー
「あーっ!待て待て!俺の野球道具を勝手に捨てるな!」

マイエル
「いつまでもこんなみすぼらしい継ぎ接ぎだらけのミットで遊ぶな!!
部下にチームのリーダーとしての品格を疑われるぞ!」

チャーリー
「リーダーには趣味を楽しむことも許されないのか?
執権政治にも程があるぜマイヤー!」

マイエル
「とにかく全部外に放り出せ!!
万一ここに大事なものが紛れ込んでいてもこれじゃ分からん!」

ベニー
「あ、俺のは全部捨ててくれていいぜ?来年用にまた新しいの買ってくっから」

マイエル
「いいだろう。もう二度と戻ってこないならな」



―― 三時間後。



マイエル
「チャーリー、終わったか?」

チャーリー
「まだ半分、今日中に終わる気がしねぇ。そういやフランクとベニーは?」

マイエル
「フランクは新年の祝い酒を買いに行ってくれた。
ベニーは逃げた、あとで解雇通知を送りつけてやる」

チャーリー
「なんだよ、俺も買い出しに回してくれりゃよかったのに」

マイエル
「余計な物を衝動買いする悪い癖が直ったらな。
あと一時間で目途をつけろ、他にもやることがあるからな。
それから、誰のものか分からないものがあったら触らず置いておいてくれ、
俺が片付ける」

チャーリー
「ん?…ん」



―― 一時間後。



チャーリー
「ふぅ!あとはこの一角だけだな。
ちゃっちゃと終わらせて旨い酒飲ませてもらうぜ」


カタン…。


「…ん?なんだこれ?随分古い箱だなぁ。中に何が入ってんだ…っと、わっ!!」


パカッ…ン!
バサバサ…バサ。


「いけね!壊してねぇよなぁ。まぁ大したもんじゃなさそうだが」


ガサガサ…。


「うーん、紙ばっか。特に何も書いてねぇし、やっぱゴミか…ん?」


カサ…。


「…これは手紙…か?」



『 א לתת לי עיר מולדת 



「――…読めねぇ。ユダヤの言葉か?子どもの字みてぇだけど。
なんでこんなもんが――」

マイエル
「チャーリー!!」

チャーリー
「わっ!?あ…マ、マイエルか、脅かすなよ」

マイエル
「お前、それ」

チャーリー
「あ?ああ、これはその箱に入ってたなんかよく分からねぇもん――」

マイエル
「見たのか?」

チャーリー
「へ?」

マイエル
「その中身を読んだのかと訊いてる」

チャーリー
「いやぁ…見たけど、読めねぇよ。知らねぇ言葉だ。
なんだよ怖い顔して…お前のか?」

マイエル
「………いや、誰のものでもない」

チャーリー
「…?」

マイエル
「フランクが帰った。ついでにベニーも。
もうほとんど終わったんだろう。
お疲れ、リーダー。打ち上げにしよう」

チャーリー
「そのお言葉を待ってたぜ財政顧問様!!」



――― 深夜。



ベニー
「うっえ…飲みすぎた、気持ちワリぃ…。
フランクの奴、どんな身体してやがんだ?この俺を飲み比べでへばらせるたぁ。
マイヤーとチャーリーなんざ水でも勝てるがな、ははっ」


コツ…コツ…コツ…。


「そういや例の部屋、ちゃんと片付いたのか?」


ギィ…。


「おお、綺麗さっぱり。俺のもんホントに全部捨てちまいやがったか。
相変わらず容赦ねぇなぁ、我が家の鬼嫁は~」


コツ…ン。


「ん、あ?…箱、と手紙?
…こりゃあ確か、昔ガキの頃マイヤーが持ってた――…」


ガサ、パラ…。



マイエル 私たちに “故郷” をつくって






ベニーは翌日二日酔いで手紙読んだことも忘れてると思う(笑)
チャーリーが執権政治知ってるなんて有り得ない、色んな意味で。

以前ネタノートに書いていたマイエルの「二つ目の野望」です。
彼はこの物語全編を通した裏の主人公^ω^