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一次創作ブログ

【MOBSTERS】二人のサルヴァトーレ【1部】

 
回想、1897年、イタリア某所。
 
アントニオ・ルカーニアのもとに生まれたある赤ん坊と
若かりし日のドン・マランツァーノとの、初めての出会い。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
「ルカーニア」
 
マランツァーノ!」
 
 
「せがれが生まれたんだってな、おめでとう」
 
「あぁ、ありがとう。そうだ、君も見てやってくれ」
 
 
「この子か…、だがお前にはあまり似ていないな。この青い目も赤毛もロザリアにそっくりだ」
 
「ははは。俺はこの通り地味な見てくれだから、明るい妻に似てくれた方が嬉しいよ」
 
 
「ところで、もう名は付けたのか?」
 
「ああ!実は、君と同じ名を付けたんだ!
“サルヴァトーレ”
君のような高い教養と強い信仰心をもった賢い人間になるように」
 
 
「それは買い被りだな。
聖職者になれず、今はこうしてヤクザ者に落ちぶれてしまった男だぞ?」
 
「でも、君がいなきゃ俺は昔の喰うものも手に入らない極貧生活から抜け出せずのたれ死んでいただろう。
俺は君に出会ってからずっと君の恩恵のもとで生かされてきた。
俺の、いや…俺たち家族にとっての神は君のことだよ、マランツァーノ」
 
 
「――お前はよく私の仕事を手伝ってくれている。こちらこそ感謝しているよ、ルカーニア。
…ところで、実は近いうちに、私はアメリカへ渡ろうと思っている」
 
アメリカへ?!君、今度はアメリカで仕事をするのか?」
 
 
「私だけじゃない。組織ごとアメリカへ移住するつもりだ。
おそらくヨーロッパは近いうちに大きな戦争が起こる。このイタリアも戦場になるだろう。
そうなればシチリアでせこい密貿易をやっている余裕などなくなる。
アメリカは今経済発展と海外進出がめざましい。
そして戦争が始まれば、どの国よりも武力を手に入れられるだろう。
発展途上の軍事国家でなら俺たちの商売は大いに儲かる。
これからはあの大国で、我らコーサ・ノストラは世界一の犯罪組織になっていくのさ」
 
 
「凄いな…。なんだか壮大すぎて、俺には想像もできないよ」
 
「そうだな、まぁまだまだ先の話だ。聞き流しておいてくれて構わない」
 
 
「でも、そうか…君がアメリカへ…。じゃあ、少し寂しくなるな。
君がイタリアから離れていってしまうなら、俺たちはもう会えないんだろう?」
 
「そこでだ、ルカーニア。お前にも、私と共にアメリカに来てほしい」
 
 
「え!?俺が?!」
 
「あぁ、お前と私はガキの頃からずっと私と行動を共にしてきた。
今もお前の協力があってこそこうして商売を上手くやっているんだ。
お前は自分で思っているよりずっと利口な人間なんだ」
 
 
マランツァーノ…――」
 
「あちらに行ってからの生活は私が世話してやる。家族も連れてくるといい。
どうだ、私と共にアメリカで仕事をしてくれないか。私は親友としてお前を信頼しているんだ」
 
 
マランツァーノ……、ありがとう。
もちろんだよ!君には一生尽くしても返せない程の恩がある。
少しでも君の役に立てるなら、俺はどこへでも行くよ!」
 
「ありがとう、そう言ってくれると思ってた」
 
「本当に、君はなんでもお見通しだな。敵わないよ」
 
 
「これからもよろしく頼む、ルカーニア。一緒にアメリカンドリームを見ようじゃないか。
なことがあっるなよ」
 
 
ぁ、当り―――
 
 
―――――
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 1929年、ニューヨーク、マランツァーノ事務所
 
 
 
―――お前がマッセリアにつけばあちらの勝ち、私につけば私の勝ちになるだろう。
そしてこの抗争を終結し、コーサ・ノストラは新たに生まれかわる」
 
「………」
 
「つまり、お前は今有利な立場にいるということだ。
私が組織を完全に掌握した暁には、お前にも相応の地位と権力を与える。
どうだ、私についてくる気はないか、ルチアーノ」
 
 
「いい話だと思うぜ。三流ファミリーのリーダーの俺が組織の幹部になれるかもしれないってことだろ?
だが俺一人じゃ決められないな。帰って仲間と相談させてくれ、ドン・マランツァーノ」
 
 
「仲間か。まだ例のユダヤ人とつるんでいるんだな。
奴らは生まれついての裏切り者、そういう種族なんだ。早々に手を切った方がお前の身のためだ」
 
俺の親友は裏切らない。大丈夫だ、心配いらない」
 
 
「お前はシシリアンだからもっと利口な人間だと思っているが――
…まぁいいだろう。いい返事を待っている」
 
「感謝するよ、ドン。じゃあ……ん?なに見てるんだ?」
 
 
「…どこかで、会ったことがあるか?」
 
「どこにでもあるつまらない顔だろ。
そんな怖い顔して見るほどのもんじゃねぇよ。気にするな」
 
 
「………」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「『――Alea jacta est――』………やっとここまで来た。ここからだぜ、親父」
 
 
 
 
 
 
 



MOBSTERSニューヨーク篇における
チャーリーとマランツァーノの対立関係を誇張するために書いてみた
云わば誰も知らないエピソード。
 
あえて言うならマランツァーノの回想ということになるんでしょうか。
 
 
本編のメインストーリーだというのに未だに
ほっとんどストーリーが動いていないニューヨーク篇;;;
 
現在そのストーリーをぼちぼち進めるべくイラストなども制作中です。
もしかしたらこのお話は
そっちと合わせて読んでいただいた方がいいのかもしれませんね。
 
 
 
ではでは、今回もお粗末様でしたm(__)m