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一次創作ブログ

【MOBSTERS】プロローグ Part4【0.5部】

 
 
もう二度とフリーズしたくない!!\(^o^)/←
 
今までのプロローグの中では今回が一番長いかもです><
とくにセリフw
 
 

 
 
「気取り屋のイタリア人は黙ってろ!!お前らだって、この国じゃ何もできないくせに
人種や身分で見下されたり差別されるのはもうたくさんなんだよ!!
 
二度と俺の前に現れるな!二度とユダヤの誇りを汚すな!!」
 
 
そう言われた時、あいつに対する苛立ちは確かにあった。
 
奥歯をギリと噛みしめ、握った拳を怒りに震わせ、
このクソ生意気なガキな思いっきり殴り飛ばしてやりたかった。
 
 
だが奴の言葉は俺を激しく怒(いか)らせると同時にひどく胸に突き刺さり、
今すぐにでも殴りかかりたいと思っている俺の身体の動き封じてしまっていた。
 
 
奴の叫びは俺の中の何かと強く共鳴していたんだ―――
 
 
さまざまな感情の波が身体の中心から全身に広がっていくのを感じた。
怒り悔しさ惨めさ、そして共感
 
それは、俺がかつての親友と別れてから、ずっと忘れてしまっていた感情だった。
 
 
あいつは少しうつむいて、また瞳を前髪で隠し小さく息を整えると、
動けない俺の胸倉を右手で掴み、グイと自分の顔の前に引き寄せて呟いた。
 
 
「もう俺に近づくな……さよならだ」
その声はさっきとは比べ物にならないくらい、小さく弱々しい。
 
そしていつの間にか胸倉の手は離され、
俺の視界には背を向けて去っていこうとする奴の姿がぼんやりと映っていた。
 
 
 
………
 
 
 
 
俺は拳を震える胸に叩き込み、心の振動を抑え曇った目も見開いた。
 
 
「気が変わったぜタフ・ガイ!」
 
こんな調子のいい声を出したのは久し振りだと思った。
何がそんなに嬉しいのか、その時の俺の顔は街路に咲く花みたいなハツラツとしたものだった。
 
 
……なんだよ」
だが、ゆっくりと振り返った奴の顔はツルの雑草でも足に引っかけたような苛立った顔だった
 
 
まったく、俺は最初っからこいつの表情に振り回されっぱなしだな。
 
面白いような、可笑しいような、
嬉しい本当にこんな感じは久し振りだった。
 
 
「お前、俺と一緒にこの国変えてやらないか」
包み隠さず、出し惜しみをせず、今まで抱いていたすべての思いと夢を奴にぶつけた。
 
 
「この国は俺たち移民を助けてくれなかった。
俺たちを見下し喰い物にしてデカくなりやがったこの国に、
俺たちの存在を見せつけてやるんだよ!
 
もう誰にも馬鹿にされない、差別されないところまで昇りつめて、
この国を俺たちの手で、俺たちのやり方で、
俺たちが自由に強く生きられる世界に変えてやりたい。
 
お前とならできると思うんだ。
お前は頭でっかちなエラい奴らとも脳なしのチンピラとも違う。
権力や暴力とは違うを持ってる、俺には分かったぜ。
だから、つまり……俺と組んでくれないか、頼む」
 
 
こんな格好のつかないセリフを言ったのも、
他人に自分の意志で頭を下げたのも初めてだ。
 
誰かとともに何かを成し遂げたいと思ったのも、初めてな気がした。
 
 
 
「随分ベタな告白だな」
 
 
はぁ?!」
 
バッと頭をあげ、目と口を間抜けにポカンと開いた顔で奴の顔を見た。
それはまるで道端の犬のフンでも踏みつけちまった瞬間のような茫然とした面だった
 
 
こんなに真剣に必死になって話している俺を、
こいつは今までこんな呆れ顔で見てやがったのか!
 
 
「あ、あのなぁ!俺はこれでも真面目にちゃんと話聞いてたのか?!」
 
「聞いてたよ。俺もお前がモテない理由はよく分かったさ。
本番のプロポーズは失敗するんじゃないぞ。じゃあな!」
 
奴は俺の話を無理やりに切り上げさせた。
 
 
「このっ、待てよ!!」
 
これだけ馬鹿にされておいて、なお奴に執着する自分が不思議でしょうがなかった。
我ながら理解に苦しんだが、
とにかくその時の俺はどうしても諦めることができなかったんだ。
 
また背中を向けてさっさと立ち去ろうとする奴の前に回り込み肩を掴んで押し戻した。
 
 
ユダヤのお友達とは仲良くつるんでたくせに俺はダメなのか?
俺がイタリア人だから除け者にするのか?
からかったことを根に持ってんなら謝るから水に流してくれ、な!」
 
「本当に調子のいい人種だな、イタリア人は。
ついさっきまで俺をユダヤだガキだと罵ってくれた奴がよく言えたもんだ。
お前も結局は他の連中と同じだろ!
妄想ぬかして馬鹿な騒ぎを起こしたいならアイルランドの連中とでも遊んでろ!!」
 
 
そう言い捨てて俺の手を振りほどき走り去ろうとする奴を追いかけ、
二人表通りに飛び出した時、うるさい警笛の音が鳴り響いた。
 
 
「いたぞ!!こっちだ!!」
 
すっかり油断しちまってた。
自分が追われている身だということを忘れていた。
 
俺たちはあっという間に左右から来た警察(サツ)どもに取り囲まれちまった。
 
 
「お前だな、さっきそこで人を刺したチンピラは!
移民の分際でとんでもないことをしてくれたな!!」
 
数人のサツに腕やら髪やらを無理やりに掴まれ有無を言わさず取り押さえられた。
 
 
「イッテ!!待てよ!先にけしかけてきやがったのは向こうだぞ!?」
 
「うるさい!!薄汚い移民のガキがエラそうな口をきくな!
お前も仲間だなユダヤ人!一緒に来い!!」
そう言ってサツは奴の両腕を後ろ手に掴んで強引に引っ張った。
 
 
「なっ!?離せ!!俺がこいつの仲間だと?!ふざけるな!!」
 
ユダヤ人には拒否権も主張する権利もない!!いいから黙ってついて来い!!」
サツどもはまったくもって聞く耳持たずだった。
 
 
「はは。悪いな、巻き込んじまって。すまねぇがもう少し俺と付き合ってくれよ」
 
「じょっ!冗談じゃないっ!!なんで俺がお前なんかと――
 
「ごちゃごちゃとうるさいぞ!!
クソガキ同士仲良く同じ檻にぶち込んでやるから有り難く思え!」
 
 
こうして俺たちはサツの拳を仲良く頭に喰らいながら連行されちまったってわけだ。
 
俺はこれはかえって好都合なんて楽天的なことを考えて笑っていたが、
奴は有り難迷惑甚だしいといった面で怒り狂っていやがった。
 
 
つくづく俺たち二人は昔からソリが合わなかったんだな。
 
 
とにかく、これが今から8年前の出来事、
俺チャールズ・ルチアーノと、生涯の相棒マイエル・ランスキーとの出会いだった。
 
 
 
またいつの間にかすっかり騒ぎになっちまった街は、
イタリア人もユダヤ人もアイルランド人もごちゃ混ぜの野次馬で溢れかえっていた。
 
 
「マイエル!マイエル!!クソっ!あいつら俺のダチをどこに連れて行きやがる!
待ってろ!全員まとめてぶち殺してやる!!」
 
野次馬の中で必死に声を張り上げ仲間を呼ぶ“バグジー”は
そう叫んで裏通りを走り抜けて行った。
 
 
 
 
――今夜は降るな」
立ち昇った煙草の煙が灰色の空に吸い込まれいく―――
 
 

 
 
チャーリーがマイエルに盛大にフラれただけの回でしたm(__)m
次回場所を移してもう少し二人の痴話喧嘩(?)が続きます^^;