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一次創作ブログ

【MOBSTERS】プロローグ Part3【0.5部】

 
若干場面飛んでる、かな?
チャーリーが前回の騒ぎからとりあえず逃げられたところからです。
 
 

 
 
「曇ってきたな」
 
この街は常にスモッグのような薄汚い灰色の空気に覆われている。
空はさらに濃く黒ずんで、ちょっと小突けば今にも大雨を降らせそうな勢いだった。
 
だがそんなのはいつものことで、大概は思わせぶりで終わっちまうんだ。
 
 
わずかな陽の光も届かなくなった裏道に、顔をアザだらけにした金髪のガキが一人でうずくまっていた。
さっきアイルランド人たちにボコられていたチビのユダヤ人だった。
こうして見ると、まるで捨てられた仔犬だな…。
 
 
「よう、生きてたみたいだな。お仲間とはぐれて迷子になったのか?
急にいなくなるから今度は誘拐されちまったのかと思ったぜ?チビちゃんよ」
 
奴は俺に気づいてもそのままの恰好で目も合わせようとしなかった。
俺は構わず話しかけた。
 
 
「さっきは危なかったなチビ。
ここは俺たちイタリア人の街だが、図々しいアイルランド人の奴らがエラそうにほっつき歩いてる。
小物共が、お前らみたいな弱いガキをイジメては大物気どりでのさばってやがるんだ。
坊やには危険な街なんだぜ?ちっとは身をわきまえて大人しくしてる方がいいな」
 
 
「……それで?」
そいつはロクに表情も見せないまま弱々しい小声で話し始めた。
 
 
「結局何の用だ。律儀にさっきの礼でも言わせに来たのか?
言っておくが、あれはお前が勝手に割り込んできて俺の邪魔をしたんだ!
余計なことしやがって…これじゃとんだ恥さらしじゃねぇか…」
 
手の甲で鼻の頭を強く押さえながらそう言った。
 
 
「だから恥ずかしくなって黙って逃げ出したのか?おチビちゃん」
俺がからかいながらうずくまったそいつの顔を覗き込んでやろうとしたら、
 
「チビって呼ぶな!!!」
って、飛び上がるように立ち上がりながらそう怒鳴ってきた。
 
…今まで誰に言われても黙ってやがるから別に気にしてねぇんだと思っていたが、
野郎どうやら相当癪に障っていたらしい。
 
 
分かったよタフ・ガイ。悪かった」
俺はとりあえず改めてやってから本題に入った。
 
「まぁいいや、うまい話を持ってきてやったから聞けよ」
乱れた前髪の向こうからずっと睨みつけてきやがる奴に半歩歩み寄り、
顎を上げ奴を見下しながら続けて言った。
 
 
「もし今後、この街を怪我せずに歩きたいんなら俺を用心棒に雇いな。
ここで好き勝手暴れてふんぞり返ってるアイルランド人の連中からお前を護ってやる。
ユダヤのガキには自分を護る身分も力もねぇだろ?
ガキの小遣いでも払えるくらいには安くしといてやるからよ」
 
 
これが当時の俺の収入源だった。
アイルランド人から他の移民を護ってやる用心棒…とは名ばかりのチンピラだったが、
騒動の絶えないこの街ではこれが一番手っ取り早い稼ぎ口だった。
 
そう言って、俺はこのガキからも正当な警備代をいただこうと目論んでいたわけだが…
 
 
「用心棒だ?自分たちの街も余所者に取られちまってる優男のイタリア人に
金を払って護ってもらうなんて…まったく馬鹿げた取引だな!!」
 
 
奴からの返事は強気なNOだった。
俺の肩にも届かない背で、傷と血まみれの顔をめいいっぱい俺に突き付けながらそう言放った。
 
そのとき初めて見た奴の目は見かけ通りの華奢な作りだったが、
真っ直ぐに俺を睨みつける薄氷の瞳には見かけに似合わねぇ度胸と気迫が宿っていた。
 
 
今でもそれは忘れちゃいない。
 
 

 
 
この幕は一回で終わらせるつもりだったのですが
書いてる途中でまた延びてきちゃったので、続きは次の記事で!
 
 
チャーリーがマイエルを「チビちゃん」とからかう姿にまたしても速水真澄臭を感じてしまった(笑)